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2026年 3月15日
第36回三重県作業療法学会
学会長 杉野 達也(鈴鹿中央総合病院)


第36回三重県作業療法学会の開催にあたって

このたび、第36回三重県作業療法学会を開催できることを、心より感謝申し上げます。
今回の学会テーマは、「ナラティブとEBPの融合 ― 物語をともに創る作業療法 ―」です。

近年、作業療法の現場では、科学的根拠に基づいた支援(EBP)が広がり、私たちの実践の土台として着実に定着しつつあります。一方で、対象者一人ひとりの人生や背景、思いを支援する「ナラティブ=語り」の視点も、今あらためて大切にされています。作業療法の実践は、多様な領域に広がっています。
しかし、どの領域においても、「その人らしい生活」や「意味ある日常」を支えるためには、マニュアルに沿った支援だけでなく、対象者の語る物語を丁寧に聴き、感じ取り、ともに考える姿勢が欠かせません。

エビデンスは、確かに私たちに一定の道筋や判断材料を与えてくれます。しかし、それをどう活かすかは、療法士自身の知識や経験、そして対象者との関係性のなかでこそ形になるものだと思います。また、対象者にとっても、生活の変化や困難に伴って揺れ動く感情や価値観があります。その「揺らぎ」を感じ
ながら、ともに物語を創っていく支援こそが、私たち作業療法士の専門性であり、実践の醍醐味なのではないでしょうか。
このように、今回は対話を重視した「対話型学会」として、一般演題はすべてポスター発表とし、発表者と参加者がじっくり語り合える空間を設けております。さらに、特別講演や教育講演、三重県内の実践者によるシンポジウムも予定しており、日々の実践に生きる学びを皆さんと共有できる場にしたいと考えています。

そして、同じ三重の地で臨床・研究・教育に携わる私たちが、領域や施設の垣根を越えて顔を合わせ、つながり直す機会でもあります。交流を大切にしつつ、現場で抱える悩みや工夫を率直に語り合い、次の一歩をともに見つけられたら幸いです。
多様な領域で活躍する作業療法士の皆さまとともに、「科学と物語」を紡ぎながら、これからの作業療法をともに考える時間になることを、心より楽しみにしております。
実行委員一同、皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げます。